ひびめも

日々のメモです

乳児の無呼吸

Infant apnea.
Kondamudi, Noah P., Lewis Krata, and Andrew S. Wilt.
StatPearls (2017)

 

たまたま受け持ちに無呼吸の乳児がいたので読みました。

 

ただの自分の勉強かも。神経内科が小児科の勉強する必要あるのかは微妙なんだけど、自分の子供が無呼吸になったときに役に立つかも?とか思いながら読んでます。後述のBRUE (brief resolved unexplained events)とか、知ってれば無駄な夜間救急受診が減ると思うので、覚えておこう。

 

日本語の文献でもそうだけど、ただ文章をダラダラ読むだけじゃなくて、こうやってアウトプットするのって大事なんだなって思います。

なぜ大事かと言われても、経験的なものなのでメカニズムは説明できないんですが。そのうち勉強します。

 

背景
乳児でみられる無呼吸には生理的なものと病的なものがあります。5-10秒の周期でみられる短時間の呼吸停止は病的ではなく、周期性呼吸と呼ばれます。周期性呼吸はほとんどが週齢2-4週で見られ、6ヵ月までに消失するとされています。
乳児に起こる病的な無呼吸のことを乳児無呼吸と呼びます。乳児無呼吸は「乳児にみられる20秒以上の呼吸停止、またはそれ以下であっても、徐脈・チアノーゼ・蒼白・筋緊張低下を伴うもの」と定義されます。乳児無呼吸は特に早産児に起こりやすく、「妊娠37週未満で出生した児に見られる20秒以上続く突然の呼吸停止、またはそれ以下であっても徐脈や血中酸素濃度低下・チアノーゼを伴うもの」のことを特に未熟時無呼吸と呼んでいます。
無呼吸はそのetiologyによって中枢性、閉塞性、混合性に分類されます。中枢性無呼吸は呼吸中枢の低機能によって呼吸出力が停止してしまうことで起こり、この際呼吸努力は見られません。閉塞性無呼吸は気道閉塞によって起こり、呼吸努力が換気を維持するのに不十分であるために起こります。混合性無呼吸はその名の通り中枢性と閉塞性の混合性で、早産児では最も頻度が多いタイプとなります。

 

Etiology
妊娠28週未満で出生した早産児は特に無呼吸(未熟時無呼吸)のリスクが高いとされており、これは呼吸中枢の発達が未熟であるためと考えられています。
出生後間もない段階でみられる無呼吸は様々な理由で起こりますが、新生児仮死、母体の薬剤使用、感染、代謝障害、先天異常などがその理由として挙げられます。
中枢性無呼吸は、髄膜炎脳炎、頭蓋内器質異常、毒物への曝露、百日咳、乳児ボツリヌス症、先天性代謝異常症(ミトコンドリア病、Pompe病、Leigh症候群、ムコ多糖症など)、代謝障害(低血糖、低カルシウム血症、アシドーシス)、先天性異常(先天性中枢性低換気、Down症候群、Arnold-Chiari奇形)などが原因となります。
閉塞性無呼吸は、閉塞性睡眠時無呼吸、感染症(肺炎やクループ)、声帯麻痺、先天性上気道奇形(Pierre-Robin連合)などが原因となります。
混合性無呼吸は、早産児がほとんどですが、胃食道逆流症、百日咳、細気管支炎などが原因となります。

 

疫学
乳児無呼吸の真の頻度は未知ですが、早産児の中では出生週数が早いほどその頻度は高くなり、28週未満での出生ではほとんど全例で、33-34週での出生ではおよそ半数でみられるようです。正期産の乳児では1/1000と報告されています。

 

病態
乳児(特に早産児)では呼吸中枢がとして依然未熟であり、内的・外的ストレスがかかると無呼吸が起こりやすいとされています。成人とは異なり、新生児は低酸素血症や高炭酸ガス血症に対して一時的に呼吸数を増加させることで対応し、その後反応性の呼吸抑制・無呼吸に陥ります。哺乳時には、吸啜と呼吸の調和がうまくとれないために換気に影響が出ますし、さらに喉頭化学反射により呼吸中枢の抑制が入るため、無呼吸に陥りやすいとされています。さらに、乳児は貧血、低血糖、低体温、毒素への曝露に脆弱であり、これらも呼吸中枢を抑制します。また、乳児のしなやかな胸郭は(おそらく物理的ストレスによって)容易にcollapseするため、これが呼吸努力を引き起こし、呼吸筋の疲労、ひいては無呼吸につながるとも考えられています。

 

鑑別疾患
誤嚥、菌血症、ボツリヌス症、細気管支炎、気管支肺異形成、睡眠時無呼吸、クループ心不全、インフルエンザ、喉頭軟化症、ミュンヒハウゼン症候群

 

病歴と身体所見
病歴は、真の無呼吸なのか、周期性呼吸なのか、息止め発作(憤怒けいれん)なのか、といった鑑別にまず重要です。そして、真の無呼吸と考えられた場合には、出生前・周産期・出生後の病歴と、栄養歴を聴取します。家族歴(特に痙攣や乳児死亡、重大な疾患)も大切でしょう。薬物・毒物(タバコや一酸化炭素を含む)への曝露がないかという社会歴も大切です。睡眠時のいびきや口呼吸の有無も聴取すべきです。身体所見は先天性異常や遺伝子異常の存在のヒントとなることもしばしばあります。発熱や低体温は感染症の存在を示唆しますし、頻呼吸は下気道感染症代謝性アシドーシスの存在を示唆します。Stridorを聴取する場合は上気道閉塞が疑われるでしょう。虐待を疑うような皮膚所見も見逃してはいけません。

 

検査
病歴や身体所見を参考にし、血液検査や画像検査を行います。血算、血糖、電解質の検査は考慮すべきでしょう。発熱や低体温があれば重症感染症を考慮すべきで、その場合は血液培養、尿培養、場合によっては髄液培養を採取します。不整脈やQT延長症候群を除外するため、心電図を行います。脳波や頭部画像検査はルーチンで必要とはいえませんが、臨床像から必要と判断されれば行います。低リスクBRUEと判断される場合は、血液検査は不要でしょう。
※BRUE(brief resolved unexplained event): 米国小児医学会で提示されている概念。乳児において一過性に突然起きた、(1)チアノーゼ・蒼白、(2)無呼吸・低呼吸・呼吸不整、(3)筋緊張変化、(4)反応の悪さ、のどれかで、現在既に消失しているもののこと。病歴・身体所見によって低リスク、高リスクに分類され、その後の検査・管理指針がガイドライン上に提示されている。低リスクの基準は、日齢61日以上、出生32週以上かつ受胎後週数45週以上、初回のBRUEである、1分未満の持続であった、CPRが必要なかった、病歴・身体所見上大きな問題がない(具体例は下記文献のTable2, 3を参照)、のすべてを満たすもの。
(c.f.) Tieder, J. S., Bonkowsky, J. L., Etzel, R. A., Franklin, W. H., Gremse, D. A., Herman, B., ... & Smith, M. B. (2016). Brief resolved unexplained events (formerly apparent life-threatening events) and evaluation of lower-risk infants. Pediatrics, 137(5).

 

治療・管理
まずは心配蘇生が必要かどうかを判断しましょう。以降の管理はetiologyによりますが、新生児であればNICU管理が推奨されます。未熟時無呼吸であればCPAPやメチルキサンチン投与が有効です。正期産児ではメチルキサンチンのエビデンスはありません。哺乳に関連した事象であれば、STやOTが有効かもしれません。

 

感想

時間がある日はこうやって細かくまとめられますが、普段は感想文みたいになっちゃうのは仕方ないですね。とりあえず、BRUEは覚えておこうと思いました。

Reviewだと思って読み進めてたんだけど、なんか教科書っぽいなーと思ったらStatPearlだった。許してほしい。