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抗MAG抗体関連ニューロパチーの臨床病理学的特徴と治療

Anti-MAG antibodies in 202 patients: clinicopathological and therapeutic features.
Svahn, Juliette, et al.
Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry 89.5 (2018): 499-505.

 

昨日結婚式を挙げました。たのしかったなー。

 

1. 背景
モノクローナルガンマグロブリン血症を背景として産生される抗MAG (myelin-associated glycoprotein) IgM抗体に関連したニューロパチーは、典型的には慢性進行性の遠位優位・感覚優位の脱髄性ニューロパチーであり、失調や姿勢時振戦を伴うとされている。
Caudieらは1000 Bühlmann Titre Units (BTU) (※抗MAG抗体に対するELISA力価) のカットオフで、脱髄性ポリニューロパチーとIgMモノクローナルガンマグロブリン血症を97%の感度および86%の特異度で同定できると記述した。高力価の抗MAG抗体を有する患者の臨床および電気生理学的スペクトラムは、ほぼ無症状の患者から、CIDPのような運動優位の距離非依存性脱髄性ニューロパチー患者まで、様々である。一方、一部の患者は診断時に抗MAG力価が低値でありながらも「典型的な」電気臨床的フェノタイプを呈することがある。
治療マネジメントに関しては、抗MAGニューロパチーの免疫治療として十分な効果のある治療法のエビデンスは実のところ存在しない。しかしながら、リツキシマブは一部の患者で持続的な効果を発揮する可能性がある。
我々の多施設研究は抗MAG抗体の力価に応じた臨床病理学的フェノタイプと治療反応性について注目した。

 

2. 方法
2-1. 患者と研究デザイン
抗MAG抗体はBühlmannによるELISAで発見された。2014年3月と2016年4月の間で、14個の神経筋施設からのモノクローナIgMガンマグロブリン血症および抗MAG抗体力価 > 1000 BTUの202人の患者のデータが、後ろ向き (n=63)、前向き (n=10) 、または両方向性 (n=129) に調査された。このうち、発症、進行、臨床フェノタイプ、治療後評価に関する詳細な臨床データが不十分であった40人の患者が除外された。事前に定められたプロトコルに従って、各研究者が臨床および準臨床データを集め、必要に応じて筆頭著者が患者の医学的記録や質問表を完成・更新した。
2-2. 臨床的特徴
以下の通りのデータが集められた。抗MAG抗体力価; 発症、抗MAG抗体検出、最終フォローアップ、死亡時の年齢; ニューロパチーまたはモノクローナルガンマグロブリン血症の家族歴; 発症およびフォローアップ時の神経症候; 臨床所見。ニューロパチーの発症様式は、各研究者によって急性 (1カ月以内の進行)、亜急性(1~6カ月かけての進行)、慢性 (6カ月以上かけての進行) に分けられた。データ収集における最重症疾患段階とは、無治療患者または治療無反応患者の最終評価時、および持続的な臨床的改善または安定化を呈した患者の治療前の最終評価時である。最重症疾患段階におけるONLS (Overall Neuropathy Limitations Scale) score と modified functional impairment scale score (0-5点) がつけられた。このスコアが3以上 (3=支持なしでは一部の手動動作/歩行ができない) の場合、重度の機能障害があると考えられた。
「典型的および変異型」フェノタイプは、筆頭著者によって以下のように定義された。典型的フェノタイプ: 感覚失調型遠位型ポリニューロパチー患者で、振戦および進行性の下肢遠位筋力低下を呈することもあるもの。この変異型フェノタイプとして、最重症疾患段階で無症状/ほぼ無症状の感覚性ポリニューロパチー (ONLS score=0, INCAT sensory sum score (ISS) ≦ 4)、感覚または感覚運動性距離依存性ポリニューロパチーで失調を伴わないもの。
「非典型的」フェノタイプ: Guillain-Barré syndrome (GBS) 様の経過を示すもの、慢性経過の運動感覚多発神経根障害 (下肢腱反射消失、顕著に急速に進行する遠位型または距離非依存性の感覚運動障害、慢性的な進展)、小径線維ニューロパチー、非対称性または多巣性ニューロパチー、運動ニューロン病に関連した症例。
2-3. 電気生理
診断時点の電気診断 (EDX) 検査は、何らかの治療が行われる前に実施された。すべての患者が運動 (脛骨、腓骨、正中、尺骨) および感覚 (腓腹、正中、尺骨、橈骨) 神経伝導検査を受けた。European Federation of Neurological Societies and Peripheral Nerve Society criteria に基づき、脱髄性かどうかの判断が行われた。正中神経の遠位運動潜時の延長は、手根管症候群の存在時 かつ/または 正中神経感覚神経活動電位 (SNAP) の消失時には脱髄を示唆する所見とは考えなかった。正中神経および尺骨神経のTerminal latency index ≦ 0.25 は遠位優位の伝導遅延を示唆するものと考えられた。
2-4. 生物学と組織学
脳脊髄液 (CSF) 検査および神経生検が行われた場合、その特徴が解析された。神経病理学的側面として、直接免疫組織化学法によるミエリン鞘へのIgM沈着かつ/または電子顕微鏡観察におけるミエリン外層の幅広化と関連して、準超薄切片 (セミシン切片) において脱髄が存在した場合、IgG型抗MAG抗体関連ニューロパチーを示唆する所見と考えられた。
診断時点での抗MAG抗体の力価 (ELISA Bühlmann) は、低力価 (1000-9999 BTU)、中力価 (10000-69999 BTU)、高力価 (70000 BTU以上) に分けられた。疾患経過中に骨髄中のクローナルなリンパ形質細胞が10%以上存在していた場合、Waldenströmマクログロブリン血症 (WM) と診断された。WMや関連する形質細胞増殖性疾患が明らかでない患者は、MGUS (Monoclonal gammopathy of undetermined significance) と評価された。抗MAG抗体力価、電気生理学的特徴、神経生検に基づき、抗MAG抗体とニューロパチーの因果関係を判定した。抗MAG抗体力価が低力価である、EDXで脱髄性ニューロパチーと確実に診断できなかった、および神経病理学的パターンが軸索性ニューロパチーである場合、その因果関係は「不確実」と考えられた。
2-5. 治療の種類
用いられた治療 (IVIg、血漿交換、ステロイド、リツキシマブ、シクロフォスファミド、クロラムブシル、フルダラビン) は記録された。神経学的状態かつ/または血液学的状態によって治療適応を評価した。治療反応性の評価は、治療後6カ月および7-12カ月の時点で後ろ向きに行った。客観的な臨床反応性は、1つ以上の臨床尺度: modified Rankin scale (mRS) で1点以上、ONLSの上肢で2点以上または下肢で1点以上、下肢の失調スコアで1点以上、ISSの最大被影響半身で2点以上の改善があった場合に認められた。各施設で治療後に評価される機能障害スコア (mRSまたはONLS) にはばらつきがあったため、治療反応患者の定義には複合的なものを用いた。免疫抑制剤併用の有無にかかわらずリツキシマブに反応した患者は、可能であれば6カ月以上経過した時点でのEDXパラメーターの改善をLunnとNobile-Orazioの電気生理学的基準 (腓腹神経SNAPまたは前回導出できなかった神経のCMAPの再出現、または少なくとも2神経におけるベースラインと比較したCMAP/SNAP振幅の20%以上の上昇または遠位運動潜時の20%以上の短縮) に基づいて評価した。

 

3. 結果
3-1. 臨床的特徴
合計して202人の患者が対象とされた。男性は133人 (65.8%, sex ratio 1.9) で、平均発症年齢は62.6歳 (25-91.4歳, SD 11.2) であった。抗MAG抗体関連ニューロパチーと診断されるまでの平均期間は3.1年 (0-30年, SD 4.3) であった。発症から最重症疾患段階および最終フォローアップまでの平均期間はそれぞれ7.2年 (0.01-30年, SD 6.3) および 8.4年 (0.3-33.3年, SD 6.1) であった。6人の患者が死亡した (3.2%)。10人の患者では、生存しているかどうかの評価を行うことができなかった。死亡の原因は、ALSの合併 (1人)、転移性直腸癌 (1人)、呼吸器感染 (2人)、急性骨髄性白血病 (2人) であった。兄弟症例が2人 (1組) おり、WMおよび抗MAG抗体ニューロパチーを呈した。発症時点および最重症疾患段階での患者の臨床的特徴と、抗MAG抗体力価 < 10000 BTU (n=22) または ≧ 10000 BTU (n=180) に有意な関連性は認められなかった。


34人の患者 (17%) が「非典型的」フェノタイプを呈した (表1) が、抗MAG抗体力価との有意な関連性は認められなかった。GBS様の症例の経過は多様であった。IVIg後に完全に回復した1人の患者、および軽度の感覚性ポリニューロパチーは持続したものの運動障害と失調は改善した2人の患者が認められた。6人の患者は多巣性ニューロパチーを呈し、時に手根管、腓骨頭、肘部の神経減圧手術を受けていた。1人の患者ではPMP22遺伝子の欠失による遺伝性圧脆弱性ニューロパチー (HNPP) が証明された。MGUSを有した別の患者は、亜急性経過の臨床的および神経生理学的な外的圧迫を伴わない右坐骨神経の運動感覚障害を呈した。この患者は、EDXでさらにびまん性の脱髄性ニューロパチーが認められた。MRIで右坐骨神経における局所性のT2高信号が認められ、炎症性浮腫が示唆された。ALSの家族歴を有する1人の患者はALSを発症した。この患者は脱髄性の特徴を持つ軽度の感覚性ポリニューロパチーを呈し、神経生検でミエリン鞘の幅広化が示された。最重症疾患段階では22.4%の患者が有意な機能障害を有していた。
3-1-2. 抗MAG抗体、生物学、神経生検
抗MAG抗体の検出は、92.1% (n=186) が治療前に、7.9% (n=16) が治療後に行われた (表2)。診断時の抗MAG抗体力価が低力価、中力価、高力価であった患者はそれぞれ11% (n=22)、51% (n=104)、38% (n=76) であった。力価と「典型的/変異型」および「非典型的」フェノタイプとの関連性は認められなかった。68%の症例でMGUSが認められ、これは抗MAG抗体力価とは無関係であった (表2)。抗ガングリオシド抗体は検査された患者 (133人) のうち21.8%で陽性であり、ほとんどがIgM型抗GM1抗体であった。10人の患者が神経生検を受けた。


3-2. 電気生理
合計して170人 (84%) に対して治療前のEDX検査が行われた。ほかには、2人 (0.1%) の無治療患者のフォローアップ中、2人 (0.1%) の患者の治療中、28人 (13.9%) の患者の治療後に行われた。発症からEDX検査までの平均期間は3.3年 (0-29.2年, SD 4.6) であった。EDX検査は、下肢および正中神経に優位な遠位運動潜時の延長が目立つ脱髄性ポリニューロパチーのパターンをとった。
伝導ブロックは低頻度であった (検査された全神経のうち3.9%-12.5%) が、時に生理的絞扼部位以外の部位で観察された。SNAP振幅の低下または消失は高頻度で、腓腹神経の90% (355神経)、正中神経の95% (288神経)、尺骨神経の93.5% (247神経)、および橈骨神経の70% (224神経) で認められた。
32人の患者 (15.8%) は確実な脱髄性ニューロパチーと判定することができないニューロパチーを呈したが、抗MAG抗体力価および臨床フェノタイプとの相関は認められなかった (表1)。これらの患者では、発症とEDX検査の平均期間は5.9年 (0.1-29.2年, SD 7.9) と、全体と比較して長かった。これらの患者の中で、軸索型の運動感覚ニューロパチーを呈したのが5/32 (発症からの平均期間11.1年)、正中神経のみの遠位運動潜時の延長とSNAP振幅の低下を呈したのが2/32人 (発症からの平均期間12.8年)、ごく軽度 (脱髄の基準を満たさない程度の) の下肢および正中神経遠位潜時の延長を呈したのが2人であった。これらの2人は発症後まもなく検査されていた (発症からの平均期間0.3年)。うち1人は1年後の検査で脱髄パラメーターの軽度の進行を認めた。21人の患者は下肢のCMAP振幅が消失または高度に低下しており、正中神経遠位運動潜時が延長していた (発症からの平均期間4.8年)。1人の患者では四肢の神経のすべてがunexcitableで、blink reflexで潜時の延長が認められた。
3-3. 臨床病理学的特徴
抗MAG抗体とニューロパチーの間の因果関係は、抗MAG抗体が低力価であった5人の患者で不確実と考えられた (全体の2.5%かつ低力価群の22.7%) (図1)。これらの患者のうち2人はそれぞれIgM型抗GM1抗体およびIgM型抗GQ1b抗体が陽性であった。

図1. 臨床病理学的特徴: ニューロパチーと抗MAG抗体の間の因果関係が不確実なものは灰色のボックス内に提示した。

3-4. 治療
ほとんどの患者が免疫治療を受けた (78.2%) (表3)。免疫治療の適応の判断は、並存する免疫抑制療法の有無を除けば、主に神経学的状態に基づいて行われた。一部の患者では6つもの免疫治療が行われた (平均1.5, SD 1.3)。悪性血液疾患が並存する患者 (n=65) では、MGUS (n=137) と比較してリツキシマブと免疫抑制剤が高頻度に用いられた。
MGUS患者は、IVIgの後に反応性がないことからリツキシマブを使用されるケースがほとんどであった。対照的に、悪性血液疾患患者では、リツキシマブと免疫抑制剤がファーストラインで用いられることが多かった。

リツキシマブは最も一般的な治療法であった (n=92, 全体の45.5%)。治療後7-12カ月後の病勢の安定はリツキシマブ単剤で治療を受けた患者の1/3で認められた。客観的な臨床的反応は同期間中に31.5%で認められたが、2人の患者では一過性の改善を示したのみで6か月後のフォローアップでは改善を維持できなかった。改善は、mRS score (n=18)、ONLS score (n=17)、ISS (n=14)、失調スコア (n=11) で認められた。すべてのスコアで改善が認められたのは3人で、3つのスコアが6人、2つのスコアが10人、1つのスコアが10人であった。
リツキシマブ単剤で治療を受けた患者のうち、11人の患者 (12%) が治療中または治療直後に一過性で可逆性の臨床的悪化を呈した。これらの患者は急速に錯感覚、固有知覚性失調、かつ/または遠位運動障害の悪化を呈した。悪化を受けて、4人の患者がステロイドとIVIgで治療された。患者は数週間または数カ月かけてゆっくりと臨床的に改善し、治療前と同等の臨床状態に回復した。リツキシマブ単剤療法に対する奏効の予測因子として、臨床的、EDX、生物学的パラメータを検討した。リツキシマブに対する反応性とベースライン時の臨床的重症度、EDXパラメータとの間に相関は認められなかった。リツキシマブに対する奏効と、関連する血液学的疾患による差は認められなかった (悪性血液疾患群では9/30例、MGUS群では20/62例)。リツキシマブに対する反応性は、抗MAG抗体価 ≧ 10000 BTUと相関していた (30/31の反応者 vs 50/61の非反応者, p=0.05)。7-12ヵ月後の追跡調査において、奏効例は非奏効例に比べて症状持続期間が短かったが、年齢、性別、免疫抑制歴によるロジスティック回帰を行った結果、有意ではなかった (奏効例29例では平均3.6年, SD 3.7であったのに対し、非奏効例63例では平均5.1年, SD 4.2であった; p=0.06)。IVIgの投与により、一部の患者 (27.9%) で治療後6ヵ月間に一過性の客観的臨床的改善がみられたが、治療後7-12ヵ月間には維持されなかった。
免疫抑制剤との併用または非併用でリツキシマブを投与し、奏効または安定化した患者のうち、36例が6ヵ月以上経過した時点でEDX検査により評価された。11人の患者でEDXパラメータの改善が観察された。7人の患者はリツキシマブ単独で、4人の患者はリツキシマブと他の化学療法 (クロラムブシル、シクロホスファミド、フルダラビン) との併用で治療され、ベースラインのEDXと治療後のEDXとの間の平均期間は3.9年 (0.6-8.5年, SD 2.7) であった。

 

4. 考察
現在のところ、我々の抗MAG抗体陽性の患者コホートは文献として発表された中で最大の規模である。我々の研究は、抗MAG抗体ニューロパチーでみられる臨床的フェノタイプを拡大し、他の研究で強調されたような抗MAG抗体力価と臨床的フェノタイプの関連性が有意ではないことを強調した。抗MAG抗体関連ニューロパチーは発症後数年してから有意な機能障害をきたしうる。我々のコホートにおける死亡は基本的に、免疫抑制剤治療を受けた、かつ/または血液学的悪性疾患のある患者における感染と関連していた。Nobile-Orazioらは、32%と高い死亡率と、より長いニューロパチー罹病期間 (11.8 vs 8.4年) を報告している。
32名(15.8%)の患者が、抗MAG抗体力価や臨床症状とは無関係に、CIDPのEDX基準に合致しない神経障害を呈した。これらの症例のほとんどは、下肢または全神経におけるCMAPの消失または極端な振幅低下に依存しており、基礎にある脱髄を評価することはできなかった。この割合は、Nobile-Orazioらのコホートでは23%、Chassandeらのコホートでは17.5%に達した。
神経生検では、診断時に抗MAG抗体価が10000BTU未満であった症例でも、「典型的な」抗MAG抗体による病理学的パターンが観察されることが明らかになった。抗MAG抗体検査は、「非典型的」症例を診断するための貴重なツールである。
神経障害が抗MAG抗体と直接関連している可能性は、我々の患者の2.5%では不明であった。GM1やジシアロシルガングリオシドとの交差反応性のためか、1000-10000BTUの力価ではELISA法の特異性は低い。
リツキシマブ単剤療法に関しては、2つの対照研究で主要評価項目におけるリツキシマブの有用性 (特に最後の研究では感覚尺度) を捉えることができなかった。しかし、これらの研究では、プロトコールごとの解析において、リツキシマブ投与後のISSの有意な改善がそれぞれ8/20例と4/13例 (40%と31%) で報告されていた。さらに、多くの非対照研究では、使用されたアウトカムに応じて30-67%の患者がリツキシマブに反応すると報告されており、これは我々の結果と同様である。
治療への反応性は、血液学的状態に応じた違いはなかった。リツキシマブ投与後の臨床的な長期安定は、この進行性の障害をもたらす可能性のある病態における部分的奏効と考えることができ、長期的な前向き対照研究に注目すべき興味深い点である。
Benedettiらによって言及されたように、我々は罹病期間が短いほどリツキシマブへの反応性が良いことを観察した。Kawagashiraらは、リツキシマブに対する臨床的奏効と、罹病期間の短さ、または治療前の腓腹神経生検における神経線維密度の保持との間に相関関係があると報告した。Gazzolaらは、リツキシマブに対する奏効は、亜急性な進行および発症時の下肢近位の筋力低下と有意に関連すると報告した。われわれは、リツキシマブに対する奏効と、「非典型的な」臨床表現型の存在または神経障害の経過との間に関連は認めなかった。一部の抗MAG抗体関連ニューロパチー患者では、神経伝導検査の著明な改善が報告されている。
リツキシマブ単剤治療後の一過性で可逆性の臨床的悪化は一部の症例でしか記述されていない。この急性増悪の病態には、IgMフレア、炎症性サイトカインの放出、抗体/補体やサイトカインに対する血液-脳関門や血液-神経関門の透過性亢進が関与している可能性がある。
我々は、治療後の持続的な臨床的改善によって生じるバイアスを避けるため、最も重篤な病期における臨床データを記載することにした。部分的に後ろ向きなデータ収集と、治療に対する客観的な臨床反応を評価するための複合スコアの使用は、本研究の弱点である。しかしながら、そのおかげで、多くの患者における7年以上の臨床経過観察、臨床経過および治療管理を評価することができた。
結論として、我々のシリーズでは、臨床病理学的表現型は抗MAG抗体力価によって異なるようには見えず、抗MAG抗体力価の低い患者は「典型的な」表現型を有する可能性がある。さらに、我々の結果は抗MAG抗体関連ニューロパチーの初期段階におけるリツキシマブの有益な使用を示唆している。これらのデータは、抗MAG抗体関連ニューロパチーの臨床スペクトルの拡大を考慮し、EDXパラメータを組み込んだ適切なエンドポイントを持つ、別の臨床試験の開発を正当化するかもしれない。

 

感想
非典型的な抗MAG抗体関連ニューロパチーの症例を発表する行事が年末に控えているためしばらくはMAG続きになりそうです。
「非典型的」の中にある多発神経根障害って臨床的にどうやって見てるんだろう・・・。CIDP的な近位筋筋力低下もあればそういうふうに考えるのかしら・・・。