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後期発症重症筋無力症 - CTLA4low遺伝子型との関連と、年齢不相応な胸腺ナイーブT細胞低出力

Late-onset myasthenia gravis – CTLA4low genotype association and low-for-age thymic output of naïve T cells.
Chuang, Wen-Yu, et al.
Journal of autoimmunity 52 (2014): 122-129.

 

ブログでガッツリ基礎の文献載せるのはじめてかもしれん。

 

1. 一般的背景
重症筋無力症 (MG) の易疲労性筋力低下は、筋終板におけるAChRの喪失によって生じる。これは、80%の患者ではAChRに対する自己抗体そのものによって生じるが、他のMGサブグループでは標的は異なる。抗AChR抗体陽性患者は10%ほどが胸腺腫を有し (thymoma-associated MG, TAMG)、他に早期発症および後期発症 (EOMGおよびLOMG) という分類も存在する。胸腺腫やEOMG患者の80%以上でみられる胸腺リンパ濾胞過形成 (lymphofollicular hyperplasia, LFH) のどちらにも明らかな病因的手掛かりが認められる (これらのMGは胸腺切除によって改善する) が、LOMGについては未だ手がかりが少ないのが現状である。興味深いことに、LOMGでは、TAMGと一部の免疫学的特徴が類似している。それ以外に、LOMGの胸腺は小さい病理学的変化を示すこともあるが、ほとんどの場合は年齢相応の退縮像を示すのみである。

 

2. 方法
2.1. 患者とコントロール
CTLA4 +49A/G 一塩基多型 (SNP) に関して検査を行われた116人のドイツ人白人LOMG患者が、以下の基準を用いて我々のデータベースからランダムに選択された: 40歳以上に発症した全身型MG、AChR自己抗体陽性、放射線画像 (57人) または胸腺切除術 (59人) で胸腺腫が除外された。薬物治療単独とするか外科的胸腺切除も行うかの選択は、患者および主治医によって明らかなバイアスなく行われたものである。発症は1986-2005年の期間であり、血清は41人で利用可能であった。172人の健常コントロールで行われたCTLA4 +49のジェノタイピングの結果が、比較のために用いられた。36人の未治療白人LOMG患者から成る別コホート (表2) が、T細胞受容体遺伝子再構成断片 (T-cell receptor excision circles, TRECs) に関して検査された。彼らは50歳以上に発症した全身型MGで、2009年から2013年の間にリクルートされた患者であった。胸腺腫は放射線画像によって除外された。77人のコントロール血液サンプル (表2) が、血液バンクから取得された。

2.2. CTLA4 SNP ジェノタイピング
ゲノムDNAは血液サンプルまたは凍結胸腺組織から取得され、CTLA4 +49A/G遺伝子型に関して検査された。

2.3. 切除胸腺の組織学的評価
形態学的評価のために、HE染色されたパラフィン切片が1cmごとに作成された。LFHは、1つ以上の切片で1つ以上の胚中心を伴うリンパ濾胞が存在する際に定義された。

2.4. TREC解析
末梢血中単核球のTRECsの解析は、Buckleyら (2001) のプロトコルに従って行った。末梢血中単核球 (PBMC) は20 mLのEDTA血液から採取し、DNAを精製した。以下のプライマーを用いて、StepOne Real-Time PCR SystemsでDNAを増幅した: 蛍光プローブとして5'-FAM-acacctctggtttttgtaaaggtgcccact-TAMRA-3'、フォワードプライマーとして5'-cacatccctttcaaccatgct-3'、リバースプライマーとして5' -gccagctgcagggtttagg-3'。TRECの10^6細胞ごとの数を決定するため、Maxima Probe/ROX qPCR Master Minxを用いた。総細胞数が少なかったため、CD4+およびCD8+サブセットの単離は行わなかった。

2.5. 血清アッセイ
抗AChR抗体は商用の放射免疫アッセイを用いて測定し、> 0.40 nMが陽性とみなされた。Titinの主要免疫領域 (main immunogenic region, MIR) に対する自己抗体の力価は、酵素結合免疫吸着アッセイで測定した。標準的「キャリブレータ」のコントロールに対して1.6倍以上の力価の場合、陽性と判定された。

 

3. 後期発症MGに関するアップデート
3.1. 定義、年齢閾値、臨床特徴
まず我々は、AChR抗体陽性/MuSK抗体陰性/LRP4抗体陰性で胸腺腫のない全身型MGを有するLOMG患者について注目する。LOMGとEOMGの発症年齢カットオフには議論が残っており、臨床的、組織学的、免疫遺伝学的データに基づき、40歳、45歳、50歳、さらには60歳というカットオフを用いる文献もある。いずれにせよ、40歳から60歳の間にグレーゾーンが存在するのが確かで、この中には 'delayed EOMG' とすべきものや 'precocious LOMG' とすべきものが重なって存在する。EOMGやTAMGと比較して、LOMGではMGの重症度は軽度の傾向がある一方で、病型は純粋眼筋型から重度の全身型MGに至るまでスペクトラム全体に広がっている。また、球症状はRyRに対する自己抗体の存在と相関する。

3.2. LOMGの疫学と頻度の増加
50歳または60歳のカットオフを用いると、LOMG患者は全体の50%および25%を占める。我々の116人の白人ドイツ人コホートでは、50歳以下発症の患者では有意に女性が多かった (61.3% vs 34.1%; p=0.0086)。また、この傾向は発症年齢60歳以下の患者を対象としても同様であった (48.9% vs 36.2%; p=0.017)。これは図1Cのピンクおよび青色のバーで強調されている。対照的に、60歳を超えるLOMGでは、男性に多い傾向が見え始める (表2および3)。

図1. A) LOMG患者と健常コントロール血液ドナーのCTLA4 +49A/Gジェノタイプの分布。黒いカラムは+49G(+)ジェノタイプを、白いカラムは+49A/Aを意味している (* p<0.005)。B) CTLA4low +49G(+)ジェノタイプの頻度を健常コントロールとLOMG患者で比較したときのp値とオッズ比 (ORs) を発症年齢ごとに比較したもの。C) 胸腺切除を受けたLOMG患者における胸腺LFHの頻度。カラムの中の数字は症例数を表していて、ピンクと青は女性および男性患者を表している。

全員ではないがほとんどの疫学者は、LOMGの発症率は高齢化の影響を調整してもここ20-30年間で増加しているというSomnierによるオリジナルの観察を確認している。この背景には、LOMGの診断精度の向上かつ/または環境変化がありうると考えられている。

3.3. LOMGの胸腺、新規T細胞の出力と胸腺切除の影響
リンパ濾胞は、LOMG胸腺では ('delayed EOMG' の女性は別として) 年齢が一致したコントロールと同程度にまれであり、抗titin自己抗体を有する患者ではみられない。しかし、AChR+胸腺筋様細胞は、EOMGではLFHに関係するが、LOMGの胸腺ではまばらで、60-70歳ではほとんど見られないこともある。これらの筋様細胞は通常、ネイティブAChRを含む寛容原性筋自己抗原の供給源であるが、ほとんどのMG(+)胸腺腫には存在しない。腫瘍性上皮細胞におけるAIRE発現も同様であり、その正常な対応細胞は寛容原性末梢組織自己抗原のもう一つの重要な供給源である。この場合も、LOMG胸腺ではその数が減少するが、年齢をマッチさせたコントロールとの明確な差はない。さらに、胸腺切除術が有益なのは 'delayed EOMG' の若年患者だけであり、TAMG患者のように術後にMGが悪化する可能性さえある横紋筋抗体を持つ患者 (典型的には60歳以上) には効果がないようである。
胸腺のリンパ上皮組織は、加齢に伴い徐々に脂肪に置き換わっていくが、残存実質は、高齢者であっても一部のT細胞を排出し続けている可能性がある 。LOMGとTAMGの間に多くの免疫学的類似点があることから、LOMGにおける加齢に伴う胸腺の異常は、胸腺腫の挙動を模倣している可能性があると提唱された。しかしながら、LOMGと診断された時点でも、TAMG、特にMG(+)胸腺腫の患者でみられた、ナイーブT細胞 (TRECを保持) の輸出が大幅に増加した形跡はみられなかった。とはいえ、萎縮したLOMG胸腺 (筋様細胞やAIRE+上皮細胞は稀か存在しない) において、寛容誘導を逃れた少数の非常に強力なAChRかつ/またはtitin反応性T細胞の輸出を除外することはできなかった。このようなT細胞は、胸腺腫摘出後何年も経ってからMGを発症するTAMG患者に時折見られるように、最終的には末梢で病原性自己抗体反応を引き起こすかもしれない。一旦このような反応が始まると、LOMGでも同様に、例えば筋灌流リンパ節における刺激性AChR/自己抗体複合体によって、このような反応が持続する可能性がある。そこで我々は、LOMGにおける若年胸腺エミグラント (recent thymic emigrant) について、より系統的な研究を行った。

3.3.1. LOMGにおける若年胸腺エミグラント
36人の未治療LOMG患者と77人の健常年齢マッチ血液ドナーコントロールにおいて、我々はTREC/10^6 cellsと年齢の間に負の相関を認めた (LOMG: p=0.0019、コントロール: p=0.000042) (図2AおよびB)。LOMG患者ではTRECの増加は明らかでなかったが、コントロールでは60-69歳で予想外の増加がみられたTRECはLOMG患者でコントロールと比較して有意に低かった (p=0.0058) (図2C)。さらに、この差は年齢の増加とともに (54歳以降) 大きくなり、症例数自体が少なくなるまでこの傾向が認められた (>63歳でP値が最小) (図2D)。男性では女性よりTRECが低くなる傾向があった (p=0.083) が、コントロールでは性差は認められなかった。

図2. A) 異なる年齢群のLOMG患者におけるTREC。B) 異なる年齢群の健常コントロールにおけるTREC。C) LOMG患者と健常コントロールの間のTRECの比較。D) 異なる年齢範囲におけるLOMG患者と健常コントロールのTRECを比較したp値。E, F) LOMG患者および健常コントロールの女性と男性の間のTRECの比較。

3.4. 自己抗原、自己抗体、T細胞異常
LOMGの免疫学的特徴は、TAMGと顕著な類似性を示す: i) 約70%の患者で横紋筋抗原titinに対する自己抗体が認められ、特にこれは60歳以上、HLA-DR7陽性の患者で多い (RyR抗体も同様)、ii) IFN-α (40%) かつ/またはIL-12 (30%) に対する中和自己抗体が認められ、これはLOMGとTAMGにほとんど特異的である、iii) >50%が特定のTCR Vbを発現した血中T細胞サブセット (CD8+/CD45RA+およびCD4+ T細胞の両方) の拡張を持つ。これらはTAMG患者でも認められ、年齢マッチコントロールよりも高頻度である。

3.4.1. LOMG患者コホートにおける抗titin抗体
抗titin抗体は41人の患者の中で44%に認められ、これは発症年齢が60歳より前であるか後であるかに依存しなかった (7/16または11/25)。これはLOMG女性では13人中3人 (23%)、男性では28人中15人 (54%) に認められており (p=0.067)、前者がEOMGに、後者がTAMGに類似していることをサポートしている。41人中16人が胸腺切除を受けており、うち14人が発症年齢が60歳未満であった。LFHを認めた9人の中で抗titin抗体を有していたのは2人 (22.2%) のみであったが、LFHのない5人では5人全員が抗titin抗体を有していた (p=0.026)。

3.5. LOMGの免疫遺伝学
遺伝的背景は、LOMGとTAMGの間にさらにいくつかの類似性を示している: たとえば、機能的に類似したIL-10多型; EOMGに強く罹患しやすいPTPN22*R620W変異との一貫した関連の欠如。一方、フランスやドイツのTAMGコホートで報告された弱いHLAとの関連は、これまでのところLOMG患者では明らかではない。逆に、LOMGにおけるHLA-class II対立遺伝子 (e.g. フランスのコホートにおけるHLA-DR7、HLA-DR2、またはイギリスやノルウェーコホートにおけるHLA-DRB1*15:01など) との関連は、数が少ないためか、TAMGではまだ観察されていない。
最後に、自己免疫疾患感受性遺伝子であるCTLA4の高発現型+49A/A遺伝子型の傾向があり、これは他の自己免疫疾患とは対照的である。この明らかなパラドックスを説明するために、我々は以下のことを示唆した: a) 通常、末梢で活性化されたT細胞によって発現されるCTLA4は、自身のCD28と樹状細胞上のCD80との共刺激相互作用を阻害することによって、T細胞のさらなる活性化を抑制する; b) 同様の共刺激相互作用は、正常な胸腺髄質における生理的な負の選択に必要である; c) 珍しいことに、この相互作用はMG+胸腺腫では障害されており、ここではCTLA4が高発現することで負の選択が損なわれると予測されている。CTLA4発現レベルは、エクソン1の+49A/Gを含むCTLA4遺伝子のいくつかの機能的一塩基多型 (SNP) と相関している。; d) 表面CTLA4発現が低い遺伝子型は、多くの自己免疫疾患と関連しているが、これは末梢のT細胞の共刺激におけるCTLA4による干渉が減少しているためと考えられている。もしCTLA4高発現がMG+胸腺腫患者における関連を説明できるのであれば 、LOMGにおいても同じことができるのだろうか?

3.5.1. 我々の116人のドイツ人白人LOMGコホートにおける遺伝子型、発症年齢、胸腺組織
我々は、高発現型+49 CTLA4ジェノタイプの増加を予測して検査を行った。しかし、TAMGとは対照的に、我々はCTLA4high +49A/Aホモ接合体の有意な減少を観察した (p=0.047, 表3)。この減少は、胸腺LFHのない患者に限定されており、かつ40-60歳発症よりも60歳以上発症のLOMG患者で有意に多かった (p=0.0029) (表3, 図1A)。これと合致して、CTLA4low +49G(+)ジェノタイプの有病率 (i.e. +49A/Gまたは+49G/G) は発症年齢とともに漸減し (図1A)、オッズ比やP値にもこれと合致した傾向が見られた (図1B)。さらに、59人の胸腺切除後患者では、CTLA4low+49G(+)遺伝子型は、過形成胸腺よりも退縮胸腺で有意に多く認められた (表3)。発症が60歳未満の43人の胸腺切除例でも、CTLA4low+49G(+)遺伝子型は、LFHのある患者 (28人中12人) よりもLFHのない患者 (15人中12人) で有意に多かった (p=0.019)。

3.5.2. CTLA4遺伝子型と性別
年齢をマッチさせた男女の患者では、CTLA4遺伝子型の分布や胸腺LFHに有意差は認められなかった。しかし、女性のほとんどはLFHを示し (図1C)、特に60歳以前に発症した女性では、+49A/A遺伝子型の有病率はコントロールと同様であった。60歳以降では、予想されたように、男女とも、特に男性において、LFHよりもむしろ退縮を示す胸腺が多かった (図1C)。
EOMGでは、主に思春期と閉経の間に発症すること、3:1の女性偏り、女性で強いHLA関連は全てホルモンの影響を示唆している。逆に、我々が以前LOMGで指摘したHLAB7/DR2の偏りは、男性に限られていた。

 

4. 総合考察と結論
我々は、LOMGにおけるCTLA4低発現型+49G(+)遺伝子型との新たな関連と、LOMG胸腺からのナイーブT細胞の輸出の減少を報告した。この2つの所見は、TAMGにおける所見とは全く対照的であり、これらのグループは他のいくつかの免疫学的特徴を共有しているため、予想外であった。今回LOMGで観察されたCTLA4との関連は、60歳以降に発症し、男性に偏り、抗titin抗体、胸腺の退縮を示す患者で最も顕著であった。これらの特徴は明らかに、40-60歳で発症する患者の大部分とは異なる「真のLOMG」サブグループを示唆している。この "オーバーラップゾーン "の患者のほとんどは、よりEOMGに類似した病像の "遅発型 "であり、"60歳以上グループ"で報告されているHLA-DR7や-DR2/-DR15の代わりに、女性、LFH、HLA-DR3、-B8の割合が高いようである 。

4.1. 中枢および末梢寛容誘導におけるCTLA4変異
これらの知見を総合すると、CTLA4が中枢 (胸腺) で重要な役割を担っており、正常な胸腺での負の選択に関与しているという我々の考え方が支持される。我々は、CTLA4低発現バリアントによって、潜在的に自己反応性のあるTREC+胸腺エミグラントの数が減少する結果、この役割が強化されるという仮説を立てた (セクション3.5)。他のいくつかの自己免疫疾患におけるCTLA4lowアレルとの同様の関連は、末梢免疫系におけるT細胞の自己活性化の強さを反映していると考えられている。現在、LOMGでは胸腺造血が残存している証拠はほとんど認められないことから (図2)、我々の結果は、「真のLOMG」においても末梢での自己反応性T細胞の過剰活性化が同様に関与していることを示唆している。興味深いことに、T細胞レパトアの多様性はTRECと正の相関がある。したがって、我々が現在LOMG患者で証明している胸腺出力の低下は、末梢T細胞レパトアにおけるオリゴクローナルT細胞の高頻度の拡大を説明するのに役立つかもしれない。

4.2. 胸腺輸出と自己免疫 (EOMGを含む)
血中TRECの減少はLOMGに特異的なものではなく、他の自己免疫疾患、特に成人の関節リウマチ (RA)、全身性エリテマトーデス (SLE)、多発性硬化症 (MS) でも観察されている。その理由は不明であるが、CTLA4とは無関係のようである。ある研究では、RA、SLE、MSのある集団 (特にアジア人) においてCTLA4低発現遺伝子型の有病率の増加が認められたが、他の研究では認められなかったことから、別のメカニズムが示唆されている。注目すべきは、EOMGにおけるナイーブT細胞の胸腺産生が変化しているかどうか、そしてそれが病態に関連しているかどうかが不明なことである。この疑問に取り組んだ研究が1つあり、胸腺摘出の有無にかかわらず、EOMG患者の血液中のTREC数が減少していることを報告している。しかし、今回調査したLOMG患者 (表2) 以外のEOMG患者の一部は、TRECを測定する前にステロイドによる治療を受けており、彼らのさらなるデータは、胸腺造血に対するステロイドの阻害作用がTRECの減少に寄与していることを強く示唆している。免疫抑制治療に加え、他の交絡因子を考慮する必要がある。抗原、サイトカイン、または恒常性に駆動される増殖は、TRECの早期希釈を引き起こす可能性があるが、ナイーブT細胞のターンオーバーが低下すれば、TRECはより長く持続する可能性がある。したがって、i) 同一人物や異なる民族集団におけるTREC数とCTLA4遺伝子型の相関、ii) テロメア長やナイーブT細胞増殖の測定などによる交絡因子のコントロール、についてさらなる研究が必要である。

4.3. 結論
上記のような限界はあるものの、我々の今回の結果からは、LOMGにおけるCTLAlow変異型が中枢性/胸腺ではなく末梢性寛容の誘導の障害を介して免疫遺伝学的素因となりうることを示唆している。これは、我々がTAMGで提唱したものとは全く正反対のものである。それでは、LOMGとTAMGの間の血清学的類似性はどのように説明できるのだろうか?仮説では、こうした患者では顕微鏡的胸腺腫が存在する可能性が挙げられているが、こうしたものに関するエビデンスは存在しない。しかしながら、我々はLOMGの萎縮胸腺が病因的役割を果たしている可能性を完全に除外することはできない。実際、我々は先行研究において、胸腺腫とLOMG胸腺の両方で (EOMG胸腺とは対照的に) 寛容原性筋様細胞とAIRE+上皮細胞がほとんど存在しないことを示しており、これはその他の種類のMGやその他の自己免疫性疾患ではほとんど観察されないtitin、RyR、IL-12に対する自己抗体の存在をよく説明できる。実際、LOMGにおけるCTLA4とTRECに関する我々の新たな観察も、LOMGとEOMGの違いを拡張している。EOMG、LOMG、TAMGの間の比較は、表4にまとめられている。要約すると、我々は、TAMGの既知の特徴と現在証明されているこれらのグループ間の相違点とを調和させるために、LOMGの病態に関する修正された「二面モデル」を提案する。具体的には、LOMG胸腺とMG(+)胸腺腫の両方において、筋様細胞とAIRE発現上皮細胞が少ないため、AChR、titinかつ/またはサイトカインに対する発達中のT細胞の自己抗原特異性が偏るという仮説を立てた。TAMGでは、CTLA4高発現遺伝子型は、胸腺腫における無秩序な胸腺細胞選択の間、中枢寛容誘導を障害する。一方、LOMGのCTLA4低発現バリアントは、これらの自己抗原が低発現している萎縮胸腺から脱出したAChR、titin、サイトカイン特異的T細胞の活性化を促進し、末梢寛容誘導を低下させる。

 

感想
うおーなんか難しかったー。
LOMGでCTLAlow遺伝子型の有病率が高いことから、LOMGの発症には末梢性免疫寛容の障害の寄与が強いということはよくわかったけども、コントロールと比較してTRECが有意に低いことの理由がはっきり説明されていなかった。どう解釈すればいいんだろう?CTLA4lowは中枢性免疫寛容をむしろ増大させる (=輸出を減らす) と思われるので、単純にCTLA4lowの結果を見ているだけなのではないか、という説はあると思うんだよな。だとするとprimaryなのはCTLA4lowであって、もともと末梢性免疫寛容が弱い個人が、加齢に伴う胸腺の性質の変化による中枢性免疫寛容の低下 (特に筋抗原に対する反応の寛容) に伴って、自己反応性T細胞の輸出・末梢での活性化を許してしまうということなのかもしれない。