ひびめも

日々のメモです

自分がどこにいるかわからない:風景を認知する海馬傍回場所領域 (PPA) の機能とネットワーク

Differential connectivity within the parahippocampal place area.

Baldassano, Christopher, Diane M. Beck, and Li Fei-Fei. 

Neuroimage 75 (2013): 228-237.

 

朝起きて家から出たら、視界全体がまったく自分の記憶にない、見ず知らずの風景だったら怖いですよね。これが実は、「本当は見慣れた風景なのにどこなのかがわからなくなっている」んだったら、もっと怖くないでしょうか。

 

過去複数回の記事を通して、「道に迷う」という症候を分類し、そのメカニズムを考える、ということを行ってきました。

natch7th.hatenablog.com

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主にegocentric / allocentric representationという脳内空間表現の視点に基づいた記事を書いてきましたが、それ以外にも人が「道に迷う」原因はあるのです。上の記事内でも書きましたが、地誌的見当識障害はegocentric disorientation、allocentric disorientationのほかに、前向性地誌的見当識障害と街並み失認の合計4つに分類されます。

街並み失認 (landmark agnosia) は「道順はわかっているものの、街並み(建物や風景)の同定ができないため、自分がどこにいるかが把握できず、道に迷ってしまう」という高次機能障害です。知っているはずの街並みを見ても、その建物が何なのか、見ている風景がどこなのかがわからない、という一種の「視空間失認」によって、自分が現在どこにいるのかがわからなくなり、道に迷ってしまいます。この際、脳内にallocentricな空間表現は正常に存在します。今自分がegocentricに見ている街並みがその空間表現内でどこに対応するのかさえわかれば、目的地にたどり着くことはできるのです。この症候は、古典的には右半球または両側の海馬傍回後部、特に海馬傍回場所領域 (PPA: parahippocampal place area) の障害によって起こるとされています (下図赤が海馬傍回)。

PPAは風景の認知に関わる領域として有名です。PPAという文字自体は僕もよく見たことがありましたが、その詳細な機能についてはあまり理解していませんでした。だって、「風景の認知に関わる」って、具体的に何してるんだって思いませんか?僕らが今見てるもの、すべて風景と言ってもいいと思います。じゃあPPAは何してるんだ、ってなりますよね。

 

また、少し話は変わりますが、前回の記事で「脳内の空間表現は特定の脳領域ではなくネットワークによって保持・形成される」という話がありました。ただ、ヒトの脳内の「ネットワーク」を解析するってどうやるんでしょうか。fMRIを用いて脳内ネットワークを解析している論文はチラホラ見かけますが、その具体的な手法は全然理解していませんでした。

 

そんなわけで今回は、「PPA」と「ネットワーク」をキーワードとした文献を探しました。PPAが実は均一な領域ではなく、機能的・結合的に前後方向に勾配を持つヘテロな領域であることを示した論文です。

 

背景

ここ20年の間に、fMRI研究によって、視覚処理に関わる数多くの脳領域が同定されてきた。これらの領域のほとんどは、ある1つの種類の視覚刺激に対する特異的応答性に基づいて定義されている。一方で、提示された刺激に対して似通った応答性を示すものの異なった機能を持つ脳領域については、これらが部位的に近接している場合、混同されてしまっている可能性がある。たとえば、物体感知性の後頭葉外側複合体や、外線条身体領域は、機能的に異なる下位領域に分けることができる。

海馬傍回場所領域 (PPA: parahippocampal place area) も、そのような例の1つなのかもしれない。PPAは風景感受性領域とされているが、その正確な本質は未だ議論の分かれるところである。現在提唱されているモデルには、たとえば風景のジオメトリー(形状)、空間の広がり、空間を規定する物体、文脈的関係性の表現に関わっているとするものがある。しかし、これらのモデルは、暗黙的にPPAを単一の機能を担う均質なユニットとみなしてしまっている。近年、PPAは複数の機能コンポーネントに分けられると提唱されており、その根拠には、PPAの空間周波数応答性の不均一性、PPA損傷による多様な機能障害、PPAの複数の視野マップとの重なり、クラスタリングメタ解析などがある。その一方で、PPAの前後軸に沿った機能的差異は認められなかったとする研究もいくつか存在する。

サルのPPAホモログの解剖学的データからは、ヒトPPAの下位領域の存在が示唆される。サルPPAホモログは、細胞構造的にTH、TF、TFOという3つの領域に分かれており、最前方のTHは脳梁膨大後皮質 (RSC: retrosplenial cortex) や下頭頂小葉尾側 (cIPL: caudal inferior parietal lobule) と頭頂-内側側頭経路を介して結合しているし、最後方のTFは同様の領域との連結のほかに腹側視覚領域 (V4やTEO) からのより強い線維入力を受けている。まとめると、サルPPAホモログ領域は前後方向の勾配を有し、前方はRSCとcIPLに、後方は腹側視覚領域にそれぞれ強い関連を持つというわけである。

拡散テンソル画像とfMRIを用いた研究では、ヒト海馬傍回領域が後頭葉視覚皮質やRSC、後部頭頂皮質と結合していることが示された。また、PPAは空間と物体の同一性情報を結合する機能があることが知られている。しかし、PPAの前方と後方どちらがこれら2つのネットワークと結合しているのかはわかっていない。もしヒトPPAがサルのTH/TF/TFOと対応しているのならば、ヒトPPAには機能的結合性における前後勾配があると考えられる。この考えが正しいとすれば、ヒトPPAは機能的に異なる脳領域と結合を持つ2つ以上の下位領域に分割できることになり、PPAの機能についての議論に新たな視点を持ち込むことができる。

我々は近年、ボクセルレベルでの結合性マップを得るための新たな手法を開発した。今回我々は、その手法を用いてPPAの結合特性を解析した。標準的な結合性マップの解析方法は各ボクセルを独立に解析するが、我々の手法はすべてのボクセルを同時に解析することで各ボクセル間のわずかな結合性の違いを検出することができる。我々はまず、事前に定義されたいくつかのROIがどのようにPPAに結合するかを解析したのち、PPAの前方・後方領域それぞれに有意に結合する皮質ネットワークの全脳解析を行なう。さらに、それらの結合性勾配は、風景・物体への反応性という観点で機能勾配とも関連しているということを証明する。最後に我々は、PPAの結合性勾配は、PPAの領域境界を超えて腹側後頭葉皮質や海馬傍回領域にはみだして存在することを示す。

 

方法

1. fMRIを用いた結合性マップの解析と背景理論

脳内の2つの領域A1とA2の間の機能的結合を解析するための最も一般的な方法は、A1内の全てのボクセルの時間的変化の平均が、A2内のボクセルの時間的変化をどれだけ予測できるか、という点に注目して行われる。我々は、A2内ボクセルの時間的変化を最もよく予測するように、A1内ボクセルの時間的変化の重み付け平均を学習させた。ここで学習させたボクセルごとの重みは、A1内の各ボクセルと、A2領域の機能的結合の強さを示していると考えられる。単純にボクセルの重みを独立に学習させてしまうとオーバーフィットが生じてしまいがちだが、近接したボクセルの結合性特性は似ているはずであるという仮定を制約として組み込むことで、オーバーフィッティングを避けた。

これを数学的に表現すると以下のようになる。

ここで、aは結合度ウェイトマップ、bは定数、A1A2は2つのROIからのvoxels ×  timepointsで表されたデータ行列、meanυはボクセル全体の平均を表す。Dはボクセル連結行列で、ボクセルiの重みaiとボクセルiの近傍の重みの間の平均二乗誤差を計算するよう設計する。

ここでNはA1中のボクセル数、niはiの近隣集合である。ハイパーパラメータλにより、すべての重みを独立して学習させる (λ = 0) か、すべての重みを同一にする (λ = ∞) かの調整が可能である。この上で最適なaを求めるのが我々の目的である。

2. 行った3つの実験:localizer実験, object-in-scene実験, scene category実験

Localizer実験:特定の刺激に反応する脳領域を特定する実験である。この実験では、子供の顔、大人の顔、屋内風景、屋外風景、オブジェクト (特定の意味を持たない抽象的物体)、scrambled object (物体の画像を細かな正方形に分割してランダムに再配置したもの) を被験者に見せて、活動性の見られる領域を決定した。参考画像は下の図a。

Object-in-scene実験:この実験では2種類の画像が用意された。ボートまたは車が白色背景に写った画像と、ボートまたは車が道路または水を背景にして写った画像である。参考画像は下の図b。被験者たちは画像にボートまたは車が写っていること自体は知らされており、そのうえで物体が画像内の右側または左側のどちらにあるかをできるだけ早く答えるよう指示された。セッション内には、物体が意味的におかしい背景に存在する (e.g. ボートが道の上にある) 、またはおかしな位置に存在する (車が道の上でなく木の上にある) などの画像も時々混ぜながら提示した。

Scene category実験:被験者たちは、画像を見せられながら、目的カテゴリー (e.g. ビーチ、街、高速道路、山) に属する画像の枚数を数えるように指示された。参考画像は下の図c。

3. PPAと4ヶ所のROIの結合性分析

先ほど説明した方法を用いて、A1をPPA、A2を4つのシード領域のいずれかに設定し、あらかじめ定義された4つのシード領域:外側後頭複合体 (LOC: lateral occipital complex)、横後頭溝 (TOS: transverse occipital sulcus)、脳梁膨大後皮質 (RSC: retrosplenial cortex)、尾側下頭頂小葉 (cIPL: caudal inferior parietal lobule) のPPA結合性マップを学習させた。ここで、特定の実験や課題に特有な機能的結合を避けるため、object-in-scene実験とscene category実験の両方のデータを使用した。

まず、本手法が、左PPAと右PPAそれぞれの内部で均一な (=ボクセルごとの差異がない) 結合性マップと比較して、より良い汎化性能を提供する、意味のあるボクセルレベルの結合性マップを学習できることを検証した。それぞれのシード領域と被験者について、1回のトレーニングで結合性マップを学習し、残りの1回を除くすべてのトレーニングからなる検証セットでの分散説明率が最大になるように、平滑化パラメータλを調整した。その後、分類器はトレーニングランと検証セット (選択されたλ値を使用) の両方で再トレーニングされ、最終的に保留されたテストランでテストされた。結果は、各トレーニングランに対してランダムにテストランが選択され、トレーニングランのすべての選択に対して平均化された。これらの結果は、各半球のすべてのPPAボクセルが同じ値 (λ→∞に相当) を取るように制約されたROIレベルの結合マップの結果と比較された。

このとき、λは、1回の実験と2回の実験において、分散説明率が最大となるように選択された。PPAにおける学習された重みが前後軸に沿ってどのように変化するかの簡単な指標を得るために、ボクセルごとの重みと前後軸ボクセル座標の相関を計算した。相関は、左右のPPAについて別々に計算された。

4. PPAと全脳の結合性分析

さらに、PPAと脳内の他領域との間の結合パターンを調べるために、シード領域を皮質全体設定することで全脳サーチライト結合性分析を行った。A1をPPAに固定し、2ボクセル間隔の格子上の各点に3×3×3ボクセルのサーチライトA2を配置した。各サーチライトについて、すべての実験条件を用いてPPAにおける結合性マップを学習し、学習した結合性と前後軸の相関を検討した。なお、計算を高速化するため、ROI実験における最適なλ値の対数平均値に等しいλ=5.5を全被験者に統一して使用した。

5. PPAの前後軸に沿った機能勾配の解析

PPAボクセル間の結合性の違いを解析した後、これらの結合性勾配が機能的差異に対応しているかどうかを調べた。個々のPPAボクセルの反応特性を測定するために、localizer実験の結果を利用した。各ボクセルについて、風景とオブジェクトの2カテゴリーに対する反応性のt統計量を計算し、各カテゴリーの「偽物発見率 (false discovery rate)」が0.05より小さいか大きいかによって、各ボクセルに「有意に活性化」または「有意に活性化しない」という二値ラベルを付けた。PPA内の機能勾配を検出するために、前後軸とt統計量の相関を計算した。また、視覚化のため、各被験者のPPAボクセルを前後方向に走る10ビンにビン分けし、各ビンについて平均のt統計量と活性化ボクセル割合を計算し、感度プロファイルを得た。

6. LOC/TOS及びRSC/cIPLとの結合性

LOC/TOSとRSC/cIPLはPPAの異なるボクセルに選択的に結合することがわかった (結果参照) ため、これらの結合性勾配を海馬傍領域全体に拡張できるかを検討した。各皮質ボクセルについて、LOC/TOS領域内ボクセルとの相関係数の平均をとり、RSC/cIPLとの相関係数の平均と比較した。各被験者の相関マップをTalairach空間に変換し、LOC/TOS機能的結合とRSC/cIPL機能的結合に対して、被験者間で一貫した違いを示すボクセルをグループレベルで同定した。海馬傍領域に加えて、大脳皮質全体でこの結合パターンを持つボクセルも探索した。

 

結果

1. ROI結合性分析

まず、今回用いた手法、すなわちROI全体ではなくROI内のボクセルごとの結合性マップを解析することの妥当性について検討した。ROIレベルでの結合性マップとボクセルレベルでの結合性マップそれぞれについて分散説明率を計算したところ、ボクセルレベルでの結合性マップの方が高い分散説明率を示した。これによって、今回の手法の優位性が示された。なお、cIPLについては他の3領域と比べて結合性が有意に低くなっているが、これはcIPLがPPA近傍にある他の皮質領域と多く結合性を持っているという先行研究とも一致する。

次に、PPAの前後軸に沿った結合性解析を行った。もしPPAがサルTH/TF/TFOと同様の結合性勾配を持っているのであれば、PPA後方領域はLOC/TOSと、前方領域はRSC/cIPLと強い結合性を持っているはずである。実際、この仮説は正しかった。下図に示すように、PPAは両側でLOC/TOSおよびRSC/cIPLの結合性前後勾配を有しており、逆に上下軸や内外軸ではそのような勾配は有していなかったのである。

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Object name is nihms459020f2.jpg

2. 全脳サーチライト結合性分析

次に、PPAの全脳サーチライト結合性分析の結果を、PPAの前後軸に沿った色分けで示す。

ROI解析でも示されたように、LOC/TOSを含む後頭葉視覚野はPPA後部と、RSC/cIPLはPPA前部との優位な結合性があることがわかる。また、前頭前皮質 (PFC) の腹側領域や側頭葉前部の外側壁に、PPA前部との結合性があることがわかった。海馬や海馬傍回前部もPPA前部との結合性が示唆されるが、これらの部位はPPAと近接しているため、局所的ノイズによる相関を見ているだけの可能性もある。冠状断や水平断で見ると、これらの結合性パターンは左右対称性であることがわかった。

・PPAの機能的勾配解析

PPAはその前後軸に沿って異なる皮質結合性を持つことがわかった。ここから、PPAは前後軸に沿った機能的勾配を持つことが予想される。このため我々は、localizer実験において風景とオブジェクトに対する反応性の違いを検討した。

PPAの後方では、風景とオブジェクトの両方に対する高い反応性が観察された。特に、風景に対する反応性はほぼすべてのボクセルで観察された。後方から前方に移るにしたがって、風景に対する反応性はいくらか低下するが、それでも高い反応性を有していた。一方で、オブジェクトに対する反応性は前方に移るほど大きく低下し、PPA前方領域ではほとんどのボクセルがオブジェクトへの反応性を示さなかった。

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Object name is nihms459020f5.jpg

・LOC/TOS vs RSC/cIPL結合性

大脳皮質全体に対して、LOC/TOSとの結合性、およびRSC/cIPLとの結合性を示すボクセルを検索した。PPA前方でみられたRSC/cIPLへの優位な結合性は、より前方の海馬傍回領域~海馬体にも広がっていた。一方で、海馬傍回最先端部 (傍嗅皮質) は結合選択性を示さなかったが、これは先行研究とも一致した。PPA前部と同様の結合性を示した領域は、デフォルトモードネットワークとよく一致している。

 

考察

今回、我々たヒトPPAがサルTH/TF/TFOと同様に前後軸に沿った結合性・機能性勾配を持つことを示した。今までの多くの研究ではPPAは機能的に均質なものとして扱われてきたが、今回の結果を考慮するとそのような考え方は改める必要があるのかもしれない。もちろん、PPAを完全に独立した下位領域に区切ることができる、ということを言いたいわけではない。少なくともそのサルホモログを用いた研究では領域内で密に相互結合していることも示されており、下位領域が協調的に働くことで風景の表現が出来上がっているのだと思われる。ただし、今回発見された結合性勾配を考慮に入れると、視覚処理プロセスをより深く理解することができる。

1. PPA後部

PPA後部は抽象的物体に対する強い反応性を有し、LOC/TOSを含む後頭葉視覚皮質と強い結合性を有していた。これらの領域は網膜部位対応地図を有していることがよく知られており、さらに物体の形状や視覚的特徴に対する低次知覚処理に関係していると言われている。PPA後部のPPA前部と比較した特性として、flickering checkerboard stimulus (チェックの模様がチカチカ提示される視覚刺激) に対する強い反応性や、scrambled objectと比較したobjectに対する強い反応性が報告されており、PPA後部はPPA前部よりも視覚処理に強く反応することが示唆される。PPA後部は空間周波数の高さに対して強く反応することが知られていて、エッジの検出や、大きなランドマーク様のオブジェクトの認知に重要なのかもしれない。

我々の考えるPPA後部の概念は、Aguirreらの提唱したlingual landmark area (LLA) と類似している。LLAはPPA後部よりやや後方に位置し、「注意定位に値する視覚刺激の知覚」に特化しているとされた。

2. PPA前部

PPA前部はRSC、cIPL、PFC内側部、側頭葉前部外側壁と結合性を持つことが示された。さらに、PPA前部は風景やオブジェクトに対する反応性が後部と比べて低く、特にオブジェクトに対する反応性の低下が目立った。PPA前部との結合性が示された上記の領域はデフォルトモードネットワークと類似していた。デフォルトモードネットワークの中でも後部帯状皮質と上部前頭皮質はPPAとの結合に含まれなかったが、これは複数の先行研究とも一致しており、やはりPPA前部がデフォルトモードネットワークと結合しているというのは正しいと考えられた。

デフォルトモードネットワークは自伝的記憶をはじめとする内的タスクの処理に関与しているとされている。認識記憶モデルにおいて海馬傍皮質は空間的情報をエンコードしていると言われていたり、PPA前部は空間的コンテクストに基づいた記憶の再生に関与していると言われていたりするが、今回の我々の結果も、PPA前部が記憶に強い関与を持つことを示唆する結果となった。

PPA前部は、空間の広がりなどの全体的な空間特性を表現したり、個々のオブジェクトよりも風景の全体的な表現を形作るとされている。PPA前部はcIPL/RSC、すなわち抽象的オブジェクトに低い反応性を持つ領域と強い結合性を持っていたが、これはPPA前部が空間的な (個々のオブジェクトに基づかない) 風景特徴に反応するということを示しているのかもしれない。ただし、もちろん、PPA前部がオブジェクトに反応しないと言いたいわけではない。先行研究では、PPAが空間を規定するようなオブジェクトやランドマーク的なオブジェクトに反応することが報告されている。

 

結論

・PPAは均質な領域ではなく、前後軸に沿った機能勾配や結合性勾配を持つ

 

感想

まさかの2日間も投稿ストップしちゃいました。すみません。でも仕事したり当直してたり色々忙しかったんです。許してください。

PPA=風景認知、と1対1対応で考えていましたが、全然違うのですね。そもそも風景という言葉を視空間認知の側面でしっかり定義すること自体がまだできていないようなので、理解が甘々でした。PPA前部が空間記憶に関連していて、特にジオメトリー的側面から空間を表現していること、海馬やRSCとのネットワーク結合があることは、allocentric representationのネットワーク仮説を機能および機能的結合性の観点から支持していて面白いなと思いました。

別に論文を全訳してるわけじゃないんですけどブログの内容がかなり長くなって書くのにすごい時間がかかってしまいます。今回も1万字...。今度からもうちょっと要約して書くように工夫してみます。でも細かいところに面白さがあったりしてついつい書いちゃうんだよな。